「あむんぜん」感想

平山夢明先生の作品にはまったきっかけ

この2冊の小説の作者である平山夢明先生はホラー系のライターであったりいろいろやっているようですが、自分はホラー怪談集で話の編集者として平山先生を知りました。
その後図書館で見かけたのがきっかけで平山先生の小説を読んではまりました。
最近では「DINER(ダイナー)」が映画化され、ヤングジャンプで漫画化されています。原作は既読なのでいつか漫画にチャレンジしようと考えています。
平山先生の小説はどん底の環境にいる人たちの喜悲劇、グロテスクな描写、狂気にとらわれた人のその人にとってのまともな思考のトレースがうまいと個人的に思っています。
多分界隈ではもう十分有名でしょうがこの面白さが少しでも広まると嬉しいので面白かった点を紹介していきます。

GabgBang The Chimpanzee

いきなりチンパンジーにレイプされた男の話が始まります。しかも冒頭文がチンパンジーにやられている真っ最中。
この時点でかなり読者を振り分けにきています。
冒頭から最悪な状況ですが、その後も社会的に最悪な状況になりセカンドレイプのような目にあいしまいには本当にセカンドレイプされて…と本当に最悪に最悪に転がっていきます。
主人公が悲惨すぎて自分の中でどう楽しむか答えが出なかった話です。
肉体的にも精神的にも生々しい悲惨な状況が表現できるのはさすがです。

あむんぜん

タイトルの「あむんぜん」は作中の靴屋の名前でそれなりに筋の通った由来があるのだが、ひらがなで書くと変な感じがする上にその靴屋の商品がピカピカ光る靴(雨の日は感電する)とかなので何とも言えない感じがします。
とある同級生へやっかみから始まった行為が同級生の超能力を目覚めさせて…とあらすじだけだと児童小説のようです。
しかしそこは平山先生、中学卒業後杯をもらいやくざ入りを夢見る、不良という言葉では片づけられないようなキャラクターが出てきて話がかき乱されていきます。
超能力発現のきっかけも脳みそへの直接の刺激というどちらかというとホラー映画の文脈なのがいい味出しています。
最後はホラーなようなこれでよかったのだとも思わせるような少し一矢報いる展開となっています。

千々石ミゲルと殺し屋バイブ

ある意味では現代人の開眼や悟りを描いた神秘的な物語なのかもしれません。
主人公の女性が闇金の支払いのためにとある撮影現場に送り込まれて…という話です。
途中から主人公の付き添い役というか見張り役というか仲介役のような男性がどんどんキャラ立ちしていき、最終的にはどん詰まりの状況を吹き飛ばすヒーローのような立ち位置になります。
狂気ともいえる強烈な願望や思いがついには現実の法則性を塗りつぶすシーンというのはフィクションの醍醐味です。
その発端がとあるマニアックな裏物の撮影なのが平山先生らしいですが。

あんにゅい野郎のおぬるい壁

こちらは絶望的な状況で本人視点では願いがかなったかのように見えたもののはたから見ると哀れな結末になっています。
どん底の状況で最後に仏心を出した主人公にはそれが幸いであり天からのわずかな救いなのかもと思いました。
冒頭のシャブ中ヤクザのシャブ中の尿を煮詰めてシャブをリサイクルをしようぜ!という命令はいかれた人間の思考のトレースが
うまくて笑いました。

報恩捜査官夕鶴

タイトルを見ればわかるように鶴の恩返しをもとにした話なのですが、そこにコテコテの広島弁と刑事ものとダンゲロス(架神恭介先生作のエログロ能力ガチバトルもの)を混ぜたような闇鍋みたいな作品になってます。
単純にコテコテのやり取りととんでもない種明かし、地球の危機を救うためのさらにとんでもない種明かしを笑って楽しめれば勝ちだと思います。
いけ好かない上司もきっちりやりこめられて(平山先生風でクッソ下品ですが)めでたしめでたしのまさに昔話オマージュの話です。(本当に?)

ヲタポリス

地下アイドルにはまるオタクが題材の話です。
完全にそのコミュニティだけでしか通じない言葉、マイナーなジャンルを最初期から盛り立ててきたファンとしての過剰な自意識など日の当たるところから見たら「キモイ」で一蹴されそうなオタクの生態を過剰に味付けしつつもリアリティたっぷりに描いています。
しかも強烈に下品なパロディが盛りだくさんでグループ名は「ヤブサカ69」、曲名は「別格!枕モンスター!」、打ち上げの居酒屋が「ヲ民」などとふざけまくっています。
帯にあった「頭が悪くなるから読んじゃいけません」のセリフに一切の偽りなしです。
それでも誰も死なず一応のハッピーエンドを迎えます。読んだ後に飯が食いたくなくなるような胸糞の悪い話が描かれることも多いので
最後の話は笑って終われるように順番に気を使ったのでしょうか。

自分がこの本の中で一番好きなのは「報恩捜査官夕鶴」です。これが一番頭空っぽにして楽しめる作品だと思うので。

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